電子契約における電子サインと電子署名の違いを簡単に説明

COVID-19による在宅勤務、働き方の変化により出社しないと出来ない仕事の見直しが加速している印象です。特に、ハンコによる押印が必要となる契約書の手続きは代表格。そのため、紙による契約から、電子契約にする動きが注目されています。

大手、特にWEBをプラットフォームにしている企業(下記、LINEやメルカリなど)での電子契約宣言も相次いでいる印象があります。

LINE、5月1日より全ての契約に電子契約を導入 | ニュース | LINE株式会社
LINE株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:出澤 剛)は、新型コロナウイルス感染拡大および対応の長期化に伴い、5月1日よりLINEおよびLINEで押印業務を実施しているグループ各社の全ての契約において、原則、電子契約を導入※1いたしますので、お知らせいたします。
メルカリ・メルペイ、新型コロナウイルスの感染拡大の長期化を受け、電子署名による契約締結を推進
株式会社メルカリと株式会社メルペイは、新型コロナウイルスの感染拡大長期化に伴い、取引先との契約締結時に必要な捺印および署名手続きを、権限者の署名による対応、または電子署名サービスでの契約締結に切り替えていく方針を決定いたしました。 新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、メルカリ・メルペイでは2月19日より、原則...

これらのアナウンス文を読んでいると「電子契約」「電子署名」など似たような単語が並んでいます。これをさらにもう少し調べ始めると「電子サイン」という単語も現れるし、「電子証明書」なる単語も出てきます。このあたりまでくるとITに興味ない人にとってはページを閉じたくなるか、もしくは全部同じことだろうと自由な解釈をしかねないです。「サイン」って「署名」を英語にしただけでしょ?と思ってもおかしくないです。

でも、実際はここに出てきた単語は全て違うので、簡単にざっと整理してみます。

電子契約は全体を称する単語

まず最初に「電子契約」というのは、全体を称する単語と解釈することを前提にしましょう。紙に実際にな印鑑を使って捺印する行為ではなく、電子、つまりインターネットを介して電子的に作成した契約書に対して、双方が合意の意思表示を電子的にサイン(署名)することで、当該契約の締結を行う行為の総称です。

この全体を称する単語を誤って「電子署名」と書いているケースを目にします。しかもよく見かけます。そのため、とても混乱しがちですが、全体を称するのは「電子契約」としておいてください。

電子契約には2種類の手段がある

法的に効力を示すレベルでの電子契約を実現する手段・方法には大きく2種類の手段があります。

・電子サイン
・電子署名

日本語と英語の違いくらいにしか見えませんが、これは全く違います。ここを技術面を無視してすごく簡単に説明するならば、

電子サインは、比較的容易に利用可能
電子署名は、電子サインより大変だけどその分、契約の効力が強い

となります。図にしてみるとこのような感じです。

電子契約で大切なことは、契約を締結した本人を証明する証拠力の担保です。この証拠力の担保の方法がこの2つの手段では異なっています。電子サインの方が簡易的なため、利用範囲が広く、導入がしやすいというメリットがあります。その分、証拠力(真正性)の担保のために複数の要素の組み合わせが必要になります。

電子署名は、複数の要素ではなく1つの要素「電子証明書」を用いることで担保できますが、この電子証明書の管理について、正しく理解して運用することが必要になってきます。

真正性の証明の違い

整理すると、2つの違いはこうなります。

電子サイン・・・
文書とともに証跡が含まれる安全なプロセスをしようして署名を証明する

電子署名・・・
暗号化により文章を署名に紐づけて証明する

つまり、プロセスの証拠力をもって証明するか、署名そのものがもつ証拠力をもって証明するか、の違いとなります。


先の図に出てきた「タイムスタンプ」や「電子証明書」などまだまだ分かりにくい単語がたくさんあります。一気に詰め込むとやっぱり混乱するので、このあたりはまた別の投稿で説明していこうと思います。

まず、最初に理解してほしい大事なことは以下の5点になります。

・「電子契約」というのは大きく全体を称する単語
・電子契約を実現する手段として「電子サイン」と「電子署名」がある
・「電子サイン」と「電子署名」は全く異なる
・「電子サイン」は導入しやすい
・「電子署名」は証拠力が強いが「電子証明書」が必要

いかがでしょうか。この前提だけでも、電子契約サービスを展開している各社の情報を読み取りやすくなるのではないでしょうか。

取引の相手先が誤解しているとコミュニケーションのミスが生じるケースもありますので、まず電子契約を行う話になった場合は、認識合わせを行うところから始めましょう。特に「電子署名」という単語をどういう理解で使っているかを正確に把握し合わないと、電子証明書がいるのかどうかなど含め、対応の負荷が変わってきます。相手があまり理解出来ていなそうだったら、相手のIT部門に聞いてもらうことも大事だと思います。途中まで進んでからやっと認識が一致してやり直しになるくらいなら、最初にしっかり確認した方が絶対に効率的になるはずです。

時間や労力の軽減、印紙不要、場所という制約を取り除くなどのメリットが大きい電子契約ですが、コミュニケーションミスでやり直しになることは紙の契約書では起きにくい点です。だからこそ、最初にしっかり認識を一致させるように心がけましょう。

コメント

  1. […] 電子契約における電子サインと電子署名の違いは以前記事にしましたので、今回はその中の電子サインについて解説してみます。そもそも電子サインを実際に使ったことがないとイメージが湧きにくいこともあると思いますので、オーソドックスなケースで、電子サインの流れを簡単に説明してみようと思います。 […]

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